印象に残っている人⑩ー⑥

 

s-ta.hatenablog.com

 

病院で弟・本人に会い、入院の手続きは進められました。本人はひっきりなしに「家に帰りたい」と話しており、弟と看護師は渋い顔をしていました。それから3日後、病院から連絡があり

看護師「本人がベッドから転落して、腕を骨折しました」

という内容でした。本人へ会いに行くと

本人「ここは地獄だわ」

私「どうしてですか?」

本人「自由がないのよ。ずっとベッドで過ごさないといけないし」

私「骨折しているので仕方ないですよ」

本人「家に帰りたいわ」

私「やっぱり家がいいんですね。けれども一人で生活はできないですよね?」

本人「近所の人がいろいろしてくれるからいいわ」

私「もうしてくれませんよ」

本人「ご飯なら買い物は配達してくれるし」

私「そもそもコンビニで支払いできてないから、携帯はとまってるでしょ」

本人「それならヘルパーに頼むわ」

私「物盗られるって言うし、わがまま言うじゃないですか」

本人「じゃあ介護サービスいらないわ。使わなくても生活はできるから大丈夫よ」

私「ちなみに退院してから施設に入るとかは?」

本人「絶対嫌よ」

私「・・・そうですか。けれどまずは骨折の治療が優先ですよ」

本人「帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい」

私「・・・(無視して帰ろ)」

と同じ話なので帰りました。看護師に確認したところ1か月くらいは入院が続きそうなので、その間にどうするかをみんなで考えることにしました。今回の入院は病院の看護師が屈強な精神力を持った方々だったためか、本人も意見は言いつつも入院し続けられました。しばらく経ち・・・

看護師「本人とは相変わらず帰れないよってやりあっていますけど、骨折はだんだんよくなっています。状態も落ち着いてきているので、介護保険の認定の変更をしてもいいかもしれません」

私「わかりました」

看護師「骨折の治りはいいですが、日中はあまり動かないので脚の筋力は落ちています」

私「今は要支援2なので、今後は介護の認定になりそうですね」

看護師「なりそうです。介護なら担当も変わりますね」

私「今後のことは親族も含めて話し合ってみますね」

看護師「よろしくお願いします」

ということで、要介護3の認定がおりました。その後私の事業所でも話し合った結果、退院後は

①施設に入る

②自宅に帰る

で意見はわかれましたが、管理者を含め多数は①でした。私は②だったのですがそれだと今までの繰り返し(契約→サービス使う→中止→別の契約)になるので、条件付きの案を出しました。①の案だけでは命の保証は考えられますが、退院してすぐ施設入所になると「あんたが無理やり施設に入れた」と言われかねないことと、入所したとしてもトラブルが続きそうであるため②の案として一度自宅で生活してもらい(介護サービス等の支援なし)、一人での生活は無理だから施設に入りますという意向を、本人から聞き取ってから施設入所する、という提案をしてみました。しかし「家で亡くなられたらどうするの」とか「孤独死になったら、その周りの住民がさらに周りの住民から何をしていたんだって言われちゃうのよ」という助言をもらえたため、②の案を実行するにも周りが一枚岩になる必要があることから、関係者と意見を出し合うことにしました。話し合ったり根回しした結果

①弟「以前お伝えしたように、仮に姉が家で亡くなっても親族は誰も文句言いません。むしろせいせいするはずです。姉が施設に入りたいと言うのであれば契約はしますが、あの性格なら自宅での生活が一人では無理ってことがわからない限り入らないでしょうね。ですから私はあなたがたの方法を支持します」

②いとこ「弟と同じ意見です」

③近所の人・民生委員「今回は手を出さずに見守るしかないわね」

④担当ケアマネ「わかりました。今から本人が入れそうな施設を探しておきます」

⑤入院先の病院「え、退院した後は家に帰すんですか?」

病院内でざわざわ・・・

「本人の性格を考えると、そのほうがよさそうですね」

⑥市の担当窓口「こんな状態(要介護3)で帰すんですか?って思いますけど、本人も含めてみなさん意向が一致しているので、やってみるしかないですね」

⑦私の所属事業所「みんなの意見がまとまったので、やってみますか」

ということになり、本人を支援なしで自宅へ帰すことにしました。

つづく