印象に残っている人⑤

地域包括支援センターにいたころのケースです。1月のとある日、17時くらいに民生委員から電話がありました。

民「地域の住民(80代)が家の前で倒れて救急車で病院に運ばれたんだけど、入院の必要性はないって言われている。家族もいないしお金も持っていなかったから、病院から依頼があって私が車で病院まで迎えに来ているのよ。今から家に送るわけなんだけど、心配なので家まできてくれない?」

私「いいですよ(なんで病院は民生委員に頼んだんだろう)」

本人の自宅で合流

民「本人は一人で歩けないのよ」

私「それでも入院の必要ないんですね」

本人「大丈夫大丈夫」

車から降りるも、二足歩行でふらふらしている。両脇を二人で抱えて自宅へ

本人「大丈夫大丈夫」→言ったそばから畳に顔面から転倒

私「(痛そう)ふらふらします?」

本人「ぐるぐるするけど大丈夫です」

民「本当に大丈夫?」

本人「大丈夫です、保険証を探さないと」→またもや転倒

私「家族はいます?」

本人「いいえ、家族はおりませんし、ここには一人で住んでいます」

私「このまま置いて帰ると危ないから、他の職員にも来てもらって検討しよう」

ほどなくして上司と看護師が到着、さらにフットワークの軽い行政の職員も来てくれた

上司「転倒しすぎね」

看護師「これでも入院の必要性はないのか」

民「検査した結果、数値的には問題なかったらしいのよ。それと家族も親族の情報もないし、近所の人に聞いても電話番号とか何も分からないのよね」

行政「たしかに転倒してて危ないですが病院の判断もあることと、本人は一応会話はできていますね」

私「情報も少ないしどうしようもないですかね」

話し合った結果

①今までずっと一人暮らしだったし、昨日も近所の人と談笑していた

②寒いけど家には布団もあるし、本人も大丈夫だと話す

③明日朝から私と民生委員で訪問してもらって、体調確認したり家族の連絡先を再度聞いたりしていこう

④行政もやむをえない措置として保護するほどではない

との判断から、本人にも再度聞き取りを行い明日訪問することを伝え終了しました(結局帰るの20時くらい)。

次の日・・・

8:30から民生委員と私で訪問

民「大丈夫かしら」

私「昨夜も寒かったですもんね」

玄関で呼びかけるも、反応なし

民「玄関のカギはあいているわね」

私「反応ないし、入ってみますか」

本人が布団のうえで下着だけでうつぶせになっている(衣類は脱いでいた)

私「やばそうですね」

腕を触ってみると氷のように冷たい

民・私「あわわ・・・」

私(とりあえず救急車呼んで、警察にも連絡しないと・・・上司にも連絡しておこう)

救急車はすぐ到着

救急「亡くなられていますので、病院には運びません。今後は警察へ事情を説明されてください」

私「了解」

民「残念・・・」

警察到着

警察「あなた方はどのような関係で」

私「かくかくしかじか・・・」

警察「刑事課がくるので、申し訳ないが同じような質問があるかもだけど答えてあげて」

私「了解」

刑事課到着

私「かくかくしかじか・・・」

上司・行政職員到着

上司・行政「残念だったわね」

私「今回のケースはどうしようもない・・・かな?」

上司「いろいろ課題は残っているので、それについて話し合いと会議をしましょう」

というながれで、昨日まで(13時間前まで)話せていた人が亡くなったことと、その場面を発見してショックでした。民生委員の方もショックだったようです。その日は救急隊・警察の対応で、3~4時間くらいかかりました。このように相談業務の仕事では命にかかわる場面に遭遇する場合もあるので、一人で決断せずいろいろな視点で考えたり話し合ったりする必要があります。今回は残念な結果となりましたが、このケースを忘れずに一人で対応することがないように連携をとりながら業務にあたっていきたいと思います。

ちなみに本人は寒いのに服を脱いでいたのですが、そのような行動を矛盾脱衣というそうです。寒い→身体を温めようとする→寒すぎ→さらに温めようとする→服を脱いじゃう、という流れっぽいです。脳と身体のずれがありすぎて錯覚するのか、はたまた異常な感覚になってしまうのか、詳しくは良く分かっていないそうです。