私が介護職として通所リハビリテーションの事業所で働いている時のエピソードです。12月の冬に寒くなった時があり、なんとなく体調が悪くなりそうな予感がしながら出社したときがありました。勤務後しばらくして鼻水と咳がでだしたので体温を計ってみると39度とでたため、上司に相談し早退し病院へ行くことにしました。利用者からはおだいじにーと心配され、その中に今回の主人公の幸子さん(仮名)がいました。
幸子さんは一軒家に一人暮らしの80代の女性で、筋力はやや落ちているものの移動は一人でできる方でした(なぜか繰り返す文字が多い文になってしまった)。また、認知症はないのですが精神疾患があり、夜中に道路へ飛び出したり大声で叫んだりするようなこともあります(今思うとおそらく統合失調症か)。また、以前は学校の先生をされていたということと、性格はおだやかで謙虚な印象を受ける人でした。幸子さんは私の勤めている事業所に通いだして1か月くらいでして、利用者同士や職員もまだ今から仲良くなっていく最中、という感じの状況でした。
私は当時26歳くらいで精神疾患に関する知識がほとんどない状態だったので、精神疾患を持っている利用者のことをなんとなく怖いなーとか、何を考えているんだろうと興味はあるが不安もあるという感じでした。
そういえば熱がでたのは風邪だったので、薬をのんで数日で回復しました。仕事に復帰して何日かたったころ、幸子さんと会う日がありました。私は初めて幸子さんから話しかけられ
幸「あなた、体調はどうなの?」
私「おかげさまでよくなりましたよ」
幸「それはよかったね。そういえば今日はあなたのために、秘伝の薬を持ってきたのよ(バッグゴソゴソ)」
私「え、なんですかそれ?」(やばそうだな)
幸「これ(紙袋に入って、中身が見えない)はね、私が調合したものだから後で飲むといいわ」
私「幸子さんが作成したんですか?」
幸「そうそう、あなたのために」
私「え、もらっていいんですか?」(やばそうだな)
幸「どうぞどうぞ。けれど、今は開けないでね」
私「じゃあそろそろ休憩なので、昼食後に飲んでみますね」(ここで開けちゃダメなのか)
幸「いや、この薬は・・・そうね、家に帰って映画でも見ながら飲むといいわ」
私「・・・」(どんな薬やねん)
と、紙袋を受け取った(受け取ってしまった)のですが、それは予想以上にずっしりしており、中身はビンっぽい感じの重量物でした。ますます想像が膨らんでしまい、よからぬ緑色のドロドロした液体(魔女が混ぜているアレ)をイメージしていました。
休憩中一緒になった同僚にこのことを話し開封したところ、中からでてきたのは
②柿ピー
でした。まさか幸子さんがこんなアメリカンジョーク的なことをやってくるとは思いもせず、我々は一瞬固まったあと笑ってしまいました。
人はみかけによらないというか、先入観で判断してはいけないというとてもいい体験でした。幸子さんのおかげで精神疾患を持っている方に対する不安や怖さが和らぎましたし、その後興味もわいて勉強するきっかけになりました。