印象に残っている人①

私が仕事をしているうえで、印象に残っている人とのエピソードを記したいと思います。

私は高齢者のグループホームで働いていた時期があります。介護保険のサービスで正式には「認知症対応型共同生活介護」といいます。漢字で書くと難しいですね。中身は

認知症の利用者を対象にした専門的なケアを提供するサービスです。利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、認知症の利用者が、グループホームに入所し、家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などのサービスを受けます。
グループホームでは、1つの共同生活住居に5~9人の少人数の利用者が、介護スタッフとともに共同生活を送ります。”

(介護サービス情報公表システムより引用)

というものです。認知症の方同士が、一つの建物で一緒に暮らすところなんですね(部屋はそれぞれありました)。私がグループホームで働きはじめたのは24歳で、介護職員としては経験も知識も少ない状態でした。利用者(施設に入所している方)は80代の方が多く、身体の動きもゆっくりで状態も落ち着いている(入院するほどではない)方が多かったです。仕事を始めたころ、重点的に覚えることとしては

①名前や好み、得意なこと等を覚える

②一日の生活の流れを知る

③どのような疾患で、どういった症状があるのかを理解する

④職員の役割を理解する

の4つがあげられます。

入職して2日目、先輩職員から和子さん(仮名・女性)の介助を指示されました。和子さんは比較的身体の動きは良好で、手を引いて一緒に歩ける方でした。ソファに座って機嫌よく唄を唄ったりテレビを見たりされていたため、そろそろ時間的にトイレの介助を、という流れでした。私がソファに座っている和子さんに対して、しゃがんで目線を合わせトイレに行こうと誘ったところ、手を握ってくれました。満面の笑みで「あなたの手はすべすべしてるね」と言ってくれました。しかし次の瞬間、和子さんは私の手の甲をべろりと舐めました。一瞬のできごとで混乱しましたが、私は「もうお嫁にいけない」とだけ思いました。顔で笑って心で泣く状態で、そのままトイレへの誘導を行いました。

和子さんの予想外の行動にびっくりしましたが、今となっては笑い話になるいい思い出です。このように全く想像しない行動や言動が体験できるので、福祉の仕事は面白いと感じます。