印象に残っている人⑥

地域包括支援センターで勤務していたときに関わったケースです。本人は60代の女性で、認知症の夫と2人暮らしをしていましたが、1人で支えるのが難しくなったとのことで我々が関わりました。本人は夫のお世話をしているようですが、なぜか夫が弱ってきていたので入院→施設入所となりました。それからしばらくして本人に不安の症状がみられるようになり、本人の自宅へ行き状況を聞くと

本人「家に1人でいると不安なのよね。特に夜が」

私「そんなときはどうするんですか?」

本人「友人を呼んでいるわ」

私「お友達が来てくれるんですね」

本人「けれど、一泊3000円にしているの」

私「友人が宿代として支払うんですか?」

本人「いやいや、泊ってもらうかわりに私が払っているのよ」

私「そんなに不安なんですか」

本人「そうなのよ」

私「お金は足ります?」

本人「なんとかなっているわ」

と話されました。面談中の私にペットボトルのジュースを出してくれたのですが、その冷蔵庫を見ると8割くらい空いており中身はほとんど入っていませんでした。食器棚も立派な物があったのですが、ほとんどスカスカでした。全体的に家具が少なく、生活感のない自宅でした。

事務所へ戻り今後どのように対応しようか検討したところ、本人には子どもがいるため情報共有も含めて連絡してみようということになりました。

子どもへ連絡をとり、本人との関係性をうかがうと

①実は母(本人)との関係が悪く、今思うと虐待のようなことを受けてきた(子どもである自分たちのことを可愛がらなかった)

②父が弱っていったのは、母が薬を飲ませなかったり食事を準備しなかったからだと思われる

③私も家庭があるのでこまめな関わりはできないが、たった1人の母のことなので、できる限り何かしてあげたいとは思う

と話してくれました。こちらからは、本人の不安が強く生活に支障がでていることを説明し、子どもからの情報も含めて本人の今後の生活のことを一緒に考えてほしいと伝えました(子どもにはネグレクトが事実であれば虐待にあたるということは伝えませんでした)。どのような対応が良いか質問を受けたため、一度家族で話し合いをし、本人の不安の軽減のために精神科病院を受診するようにしてはどうかと提案しました。後日子ども達と本人が話し合いの機会を持ち、本人が精神科病院を受診することになりました。病院で詳しく聞き取り・診察を受け

①本人が以前悪い人との付き合いがあり、違法薬物の使用歴があった

②実は子どものなかに、父親の違う人がいる

③自己愛性パーソナリティ障害の診断がおりた

ということがわかりました。同席していた子どもたちはショックを受けていましたが、点と点がつながったようで今までのこと(本人の行動)にも納得がいっている様子でした。本人は治療を続けながら、子どもたちとの関係性を保っているとのことです。
このケースのように、本人からの話だけでは真実がわからず、本人の本当の課題や困りごとにたどり着けないことも多いです。

今回の記事のように文章にまとめて結論だけ書いていくと、淡々と進んでいるようにみえてしまいますね。しかし実際は8か月くらい根気強く関わったケースになります。

相談業務では本当にいろいろなケースに出会えます。そのたびに勉強にもなりますし、自分の知識のなさに落ち込むことも多いです。しかし今回のケースのように誰かのためになれることもあるため、これからもこの業務に関わっていきたいと思っています。